”我が死によって秘密は守られた” ラスネール
「死の王」
(Der Todesking)1989年/ドイツ/監督 ユルグ・ブットゲライト

一週間で七種類の自殺が行われるオムニバス映画。死姦映画ネクロマンティックでキワモノ好きの映画ファンを歓喜させ、ドイツ当局からは要注意人物に認定されたユルグ・ブットゲライト監督作。とはいえ今回はそこまでエゲつない内容でもなく、グロ描写もこの監督にしては控えめの部類。死をエンターテインメントとして扱うこの作品を芸術作と称する風潮があるけど、私的には違和感あるぞ。
月曜日
男は会社を辞めて友人に手紙を書き、部屋を片付け身支度を整えて自殺する死ぬ直前までキチンと食事を取り、冷蔵庫内の食材を完食するという拘りが良い。部屋の中心にカメラを据え付け、それを回転させていくと部屋の様子が変わっていくのも面白い。
火曜日
ビデオ好きな男が口煩く怒る女を突然射殺する....というビデオを見ている人が首吊り自殺をする2段オチって訳でもなく。男が通うビデオ屋に当然の様に置いてあるネクロマンティックのビデオやポスターが微笑ましい。作中に映し出される植木バサミでチンコを切るゲシュタポビデオがとっても痛そうだw
水曜日
夫に暴力を受けている女と、最愛の妻を傷つけてしまう男が公園で出会い・・・男の告白が頂点に達した時に突然歪むフィルムと音声。これが作品上の演出なのか、それとも冒頭で言われてた映像素材の不備なのか。どちらにしてもこのシーンが凄く効いてる。
木曜日
ハイケ・フリードマン 23歳教師 ハインツ・クライナート 31才実業家 ベルント・プラグ 11才小学生 イグナツ・ホファー 83才農業 ナディーン&ニコル姉妹 16才女学生 .....ただ映し出される大きな陸橋と名前や職業のテロップ。車が橋のつなぎ目を通る度に鳴る無感情な音が、まるで自殺者にとって命のカウントダウン音であるかの様で恐ろしい。私的にはこの作品で一番好きなエピソードである。
金曜日
窓際でキスをする若い男女を目撃したオールドミスの女性。部屋を覗きこみ電話をかけて2人の邪魔をするが・・老いて寂しく生きるか、若くして幸せの内に死を選ぶか・・・・
土曜日
ある無差別殺人犯の残した3本のテープの全貌とは自分の生きていた証としてカメラで撮影しながらの拳銃乱射。終始無表情の犯人が怖い怖い。テープ内で語られてた
ポストモダニズムの殉教者とか、一応調べてみたけど結構難しかったのでスルーなのだ。以前このエピソード関連の記事を書いた事あるので、そっちも合わせてドーゾ。
【謎の女性の画像】 2008/02/23日曜日
目を覚ました男は突然泣き崩れると頭を壁に打ち続ける 何度も何度も....理由も何も分からないので見て感じるしか。突発的な自殺が死の王の力による物だとしたら、それは凄く恐ろしい事ではある。

各エピソードの間に挿入される朽ち果てていく男の死体。死を連想する際のフラッシュバックにも効果的に使われています。皮膚が大きくひび割れたりと特撮的には残念な出来だけど、内臓を蠢く山のようなウジはやはり気色悪いの一言。そもそも死体が朽ちる様子なんて撮る方がどうかしてるとしか。男の顔が腐っていく様子を特撮で、しかもワンカットで映した短編があると何かの記事で見た記憶あるけど、もしかしてコレの事だったのかなぁ?

全編に死の香りが漂う変な作品だけど、相変わらず音楽は美しくて素敵。サントラがあったら是非とも欲しいが、聞いたらそれだけで気分が落ち込みそうだ。音声的に不自然な箇所が2箇所あって、月曜日の手紙を書くシーンと土曜日の映写機にフィルムをセットするシーン。後付け感が否めない音声だけど真偽は分からず。これは海外で発売されてるDVDを観て確認するしかないのね・・・
いまだ当局から監視されてる為に新作が撮れないブットゲライト監督。メイキングでその姿が見れるが、意外と若くて馬鹿っぽい感じだったのが唯一笑えたw